何度でも、伝える愛の言葉。

『樹季はこのままで良いのかよ!
俺はもうこれ以上見てられない。頭の中を澪と早坂先生のことでいっぱいにしてるお前なんか。』

『悟、よせよ。』


悠くんの声も、悟くんに響いた様子はない。

どうして樹季くんの頭の中にも早坂先生が居るのか、どうしてそのことを悟くんは知っているのか、考えても考えても答えはない。



『悠斗だってそうだよ…。もっと真剣に音楽やってくれよ!バンド始めた頃の気持ちはどこ行ったんだよ!』


バンドを始めた頃の気持ち。

それは私には分からない4人だけのもの。


樹季くんと、悠くんと、悟くんと、誠ちゃん。

4人が抱いた、4人だけが共有できる気持ち。

未来への希望を詰め込んだ、4人だけの初期衝動。


私には、分からない。



『なぁ澪。お前が好きなのは、樹季なのか?早坂先生なのか?
樹季が何も知らないとでも思ってんのか?』

『悟!もうやめてくれよ…。』


今までで1番弱々しい樹季くんの声を聞いて、悟くんの言葉に答えるより先に私は部屋を飛び出していた。



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