何度でも、伝える愛の言葉。

出会ったばかりの頃、誠ちゃんは私がスクールを辞めた理由やピアノを辞めようとしていた理由をまっすぐに聞いた。

その率直さが誠ちゃんの良さで、私がごまかさずに答えたのはそのまっすぐさの中に確かな“誠実”が見えたからだ。

だから私もきちんと聞けば、誠ちゃんは必ず答えてくれるだろうと思った。



「悟くんが言ったの。樹季くんが早坂先生のこと何も知らないとでも思ってるのかって。」


何も知らないとは、どういうことだろう。


私は樹季くんと付き合い始めたときに、過去の
先生との出来事を話している。

だけどそれだけであそこまで焦るだろうか。

名前が出ただけで私よりも慌てて、遮って。

私が話したこと以外で、きっと何かがあったはずなんだ。



『それは、樹季に直接聞いた方が良いんじゃないか?』

「聞けないよ…そんなこと。」

『早坂先生の名前を出せば樹季が悲しむから?それとも自分が傷付きたくないから?』

「それは…、」


自分が傷付きたくない。

だから私は向き合うことから逃げ続けているのだろうか。


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