何度でも、伝える愛の言葉。

この状況でそんなことをぐるぐると考えてしまう自分が嫌になる。

もっと本気で音楽をしろと悟に言われたばかりだ。


本気でやってないわけじゃない。

デビューしたい、歌で食べて行きたい、その気持ちは本当だ。

だからこそ受験もせずに今こうしてバンドに打ち込んでいる。


だけどその気持ちが悟には伝わっていなかった。

俺が本気で音楽をやっていないと思われたことよりも、悟が澪をバンドに誘ったことを後悔している事実にショックを受ける俺は、恋愛に傾いていると思われても仕方ないのだろうか。



『なぁ、さっき言ってたこと本気なのか?』


重苦しい沈黙を不意に破ったのは悠斗だった。



『本気って?』

『誠太のこと。…兄貴が居たから一緒にバンドやってたって。』


悟を見つめる視線は問い詰める鋭さよりも悲しみに染まっている。

悟のその告白は俺たちに大きな衝撃とダメージを与えた。



『あぁ、本当だよ。』


悟の声に、空気が冷たくなるのを感じる。


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