何度でも、伝える愛の言葉。
『兄貴が居たから俺とバンド組んだってさっき聞いて初めて知ったし、今までそんなこと思いもしなかった。
でもこれだけ一緒に居てそれを感じさせないってことはさ、悟は俺のことをちゃんと俺として見ててくれてたってことだろ?』
悟の背中に置いた手から、誠太の優しさが滲み出ている。
能天気でポジティブな奴だと思ってきた。
なんて素晴らしいことだろう。
『本当に…本当に、誠太のこと尊敬してるし大事なメンバーなんだ。信じてほしい。』
『信じるよ。当たり前だろ。』
悟の涙声にも笑って答える誠太から、ほんの少し前の悩み苦しむ姿は見えない。
「考えたい」とこの部屋を出て行ってから戻ってくるまでの数十分の間に、誠太を動かす何かがあったのだろうか。
『樹季も悠斗もごめん…嫌な気持ちにさせて。
俺、最近焦ってたんだ。デビューしたいって言ってもなかなか結果出ねぇし、周りは皆受験だの就職だの言ってどんどん前に進んでくし。自分だけ置いてかれてるみたいで、焦って…。』
そんなときに望み通り誠太の兄貴のツテでデビューの話が舞い込んだのだから、悟が飛び付くのも無理はなかった。