何度でも、伝える愛の言葉。

『俺、デビューの話とか兄貴のこととかいろいろ聞いて混乱して…バンド辞めようと思った。』

「え?ちょっと待てよ。」

『違う違う、最後まで聞いてくれ。』


辞めるという言葉に全員が反応し、誠太が慌てて遮る。

ここまでバンドをやってきて辞めると言った者は1人も居ないから、その一言が一発で刺さった。



『俺が辞めるって言ったら…』


誠太はそこで少し言葉に詰まり、慎重に言葉を重ねる。



『澪ちゃんがメンバーとちゃんと話してって言ったんだ。俺がどうするかは悟の気持ちを聞いてから決めてほしい、4人は離れ離れにならないで、って。』

「澪…」

『あんまり必死になって言うから俺も冷静になって、悟の話をちゃんと聞こうと思った。そのときは何のことか全然分かってなかったけど、こういうことだったんだな。』


一緒にバンドをする理由。

共にひとつの音を奏でる理由。



『それで、誠太はどうしたいんだ?』


悠斗の質問に誠太の表情が引き締まる。




< 219 / 276 >

この作品をシェア

pagetop