何度でも、伝える愛の言葉。
『私も誠太さんのノロケ話聞いてみたいなー。』
「そんなこと言ってられんのも今の内だぞ。」
2人で笑い合う時間はすぐに過ぎていく。
澪には、居るんかな…彼氏、とか…。
『皆すごく練習してるから、デートする時間もないんじゃないですか?』
探りを入れたい俺とは違い、澪の疑問は純粋だった。
『まぁな…そこは難しいとこだけど、今は誠太以外彼女いねぇから。』
「へぇー…なんか、意外です。」
『遊んでそう?』
「いや、そういうわけじゃ…」
慌てて否定する姿が可愛くてついからかってしまう。
『モテそうなのになって。』
「難しいんだよね…俺らって音楽がすげぇ大事だから。天秤にかけてるわけじゃないけど、“私とバンドどっちが大事なの?”とか聞かれたら普通にバンド取っちゃうんだよ。」
これも大げさでもなんでもない話だ。
本気でデビューしたい俺らにとってバンドは、常に優先順位の1番にある。
「だいたいそうやって別れてくんだよな…誠太は奇跡だよマジで。」
『そうなんだ…。』
不意に蘇る様々な記憶。
あいつは過去を隠し、自分を隠し、本音を隠している。
澪のことばかり知りたがるクセに、俺たちだって同じじゃないか。
「なぁ、澪。」
トーンを落とした俺を、澪が不思議そうに見上げる。
『あれ?』
俺が今まさに話そうとしたときに声をかけてきたのは悠斗だった。
ベースを担いでいるから、これからスタジオに行くつもりらしい。