何度でも、伝える愛の言葉。

1度部屋を出て行ってから、誠太はまたここに戻って来た。

だけど澪は戻って来ない。


誠太と何を話したのだろう。

バンドを辞めると言った誠太に思い直すよう訴えて、自分はどこへ行ったのだろう。


デビューが決まって嬉しくないわけがない。

俺だって声を上げて喜びたい。

だけど喜びを分かち合いたい澪は、俺たちがデビューすると決めた瞬間にどうして一緒に居ないのか。



『樹季?』


安堵感が包む部屋の中でひとり黙っていたからだろう。

誠太が心配そうに聞く。



「誠太。澪は今どこに居るか知ってるのか?」

『え?今?』


明るい表情から一転、誠太の顔が曇る。



「デビュー決まったって、澪に伝えたいんだ。一緒に喜びたいんだ。」

『それは…』


今度は顔が苦しげに歪む。

明らかに何かを言い淀み、隠していた。



「誠太!どこに居るか知ってんだろ?教えてくれよ!」



早く会いたい。

早く伝えたい。

早く確認したい。

澪の気持ちを。



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