何度でも、伝える愛の言葉。

絶対に澪ちゃんから話してくれるはず。

誠太の言葉には説得力があった。

実際に澪と話した上での言葉だから参考にもなる。

だけど、とにかく今会いたかった。


俺と良基さんのどちらが好きかを問い質したりなんかしない。

たった一言、一緒にデビューしようよと伝えたいだけなんだ。


それだけ…のはずなのに。


気付いたら足は止まっていた。

近くに居ないなら家に帰っているだろう。

家に行けば会えるのに、1度止まってしまった俺の足はもう走り出そうとはしなかった。


俺と良基さんのどちらが好きかを問い質したりなんかしない。

…本当か?

澪が答えずに出て行ったことにあんなにもショックを受けていたのに。

俺だと答えて欲しかったのに。


悟が変なこと言って悪かった、と何事もなかったかのように接することができるのか。

デビューを一緒に喜び合えるとでも思ったのか。


ひとりになり冷静になった俺の心が、澪の気持ちを察する。

あんなことを言われた澪が、何の気まずさも感じないままバンドに居続けられるはずがない。



< 223 / 276 >

この作品をシェア

pagetop