何度でも、伝える愛の言葉。
そして悟の問いにすぐに答えられなかったことこそが、澪の答えなのだ。
良基さんの方が好きだから。
だから答えられなかった。
俺はそれを受け入れるのが嫌で、見て見ぬ振りをしようとしていた。
そんなもの、できるはずがないのに。
良基さんの嘘を、優しく悲しい嘘を、一緒につき続けるのはそろそろ限界だった。
澪はきっと、本当に俺を好きで居てくれたと思う。
良基さんへの気持ちを抱えたまま俺と付き合い始めたわけでもないと思う。
ちゃんと俺自身と向き合ってくれていた。
だけど一緒に居る時間の中で、不意に良基さんを思い出す“きっかけ”があって。
少しずつ良基さんのことを思い返す時間が増えたのかもしれない。
澪の記憶の中に居る良基さんは酷い裏切り者だろう。
だけど本当は…違う。
本当の良基さんは決して裏切り者でもなければ、澪は都合の良い存在だったなんて言うこともない。
良基さんが抱える嘘を澪に伝えてあげたいのに、それは俺と良基さんの約束を破ることになってしまうのだ。