何度でも、伝える愛の言葉。

「嘘って…?」

『あのとき言ったこと、全部。
でも嘘をついたのは私じゃなくて…』

「どういうこと?」


ますます意味が分からなくなる。

私と三好さんの2人しかいなかった空間で、嘘をついたのが三好さんでないとしたら…?



「あ。」


そこに思い至ったとき、思わず声が漏れていた。

嘘をついたのは三好さんではない。



「先生…?」


先生が、嘘をついていたんだ。



『そう、早坂先生。
確かめたわけじゃないの。日々野さんのこと都合が良いからとか利用しただけとか、それが本当なのかどうか。』


だけど確かめなくても分かったはずだ。

あのとき先生のことを好きだった三好さんなら、それが先生がついた嘘だと。

だって…



『先生ってさ、嘘つくの下手だよね。』


そう、先生は嘘がつけない人だ。

不器用で手探りで、素直で純粋で。



『先生が言ってることは全部嘘なんだって、聞いてれば分かった。本当に悲しそうな顔で利用しただけだよなんて、あれで嘘つけてると思ってるのかな。』


そのときの先生の心を想うと、胸が締め付けられる。



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