何度でも、伝える愛の言葉。

「…早坂、先生。」


ベンチに近付き、その背中にそっと声をかける。

いきなり良基さんと呼んでも良いのか分からず、呼びかけた声はとても小さくなってしまった。



『澪…?』


それでも良基さんは確実に気付いてくれる。

いつだって私の声に振り向き手を差し伸べてくれる、それが良基さんだった。



『なんで、ここに…?』


一目で動揺していることが分かる程、私を見る目が泳いでいる。

まだ何も伝えていないのに、こうしてまた向き合えたことが嬉しくて、込み上げる涙を必死に堪える。



「先生…私、樹季くんから全部聞いたよ。」


言い終わるより先に抱き寄せられていた。

力強くも優しい腕の中が懐かしくて、温かくて、どうしようもなく愛おしい。



『おかえり。』


涙声で囁かれたその一言を聞いた瞬間、堰をきったように涙が溢れ出す。



「良基さん…」


まるで離れていた時間を取り戻すかのように長く抱き合っていた。

あれから良基さんはずっとひとりだったのかと思うと、樹季くんやメンバーと過ごしてきた日々が鮮やかに蘇る。



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