何度でも、伝える愛の言葉。
「最近練習ばっかで全然勉強してねぇや。」
自転車を押しながら澪と並んで歩く。
『私もだよー。でも毎日皆と一緒に練習できて楽しい。』
「だな。俺もう卒業できりゃ何でも良いわー。」
ははは、と笑った澪がふっと真剣な表情になる。
『卒業したら、音楽に専念するの?』
「専念なんて言ったら格好良いけど、ただデビューするためにがむしゃらにやるだけだよ。バイトも増やさなきゃなー。」
バンドを組み、曲を作り始め、ライブも少しずつ出始めた頃から「いつかデビューする」「デビューできる」という根拠のない自信だけはあって。
勝手に進学しないと決めたものの周りからの風当たりはキツく、今では「考え直せ」と言われることもなくなってきた。
将来を考えない呑気な奴ら…と言った感じに見て見ぬ振りだ。
『デビューするためにって、どういう?』
デビューしたいという目標はメンバーの共通意識だけど、澪とはまだその話はしていなかった。
「ストリートとかライブハウスでもっと積極的にライブしたり、事務所にデモを送ったりだな。」
『そっかぁ。忙しいね。』
「デビューするためだから。俺、マジでデビューできなかったときのことって考えたことなくてさ。だからそれでできなかったらヤベェだろ。」
『私…足手まといにならないかな。』
澪が立ち止まったことに気付かず2、3歩進んだところで俺も立ち止まる。
頼りない街灯が不安気な澪の顔を照らす。