何度でも、伝える愛の言葉。
重い身体を起こして樹季に電話をかけ、スタジオで待ち合わせることにした。
『おう。』
樹季は先に来ていて、スタジオのドアにもたれていた。
ここの鍵を持ってるのは俺と悟だ。
『昨日は、ごめん。』
鍵を開けて中に入ると、すぐに樹季が頭を下げてきた。
「やめろよ、お前は悪くないだろ。」
『…あんなこと、ライブ前に言うつもりじゃなかったんだ。』
「分かってるよ。」
樹季が言ったことは正しい。
間違ってたのは俺の方だ。
『でもこのまま放っておいたら、そのうち澪を傷付けることになりそうだと思ったから…つい。』
澪を、傷付ける…。
たとえば俺が、澪を好きだと思おうとしたまま距離を縮めて、後になって澪が本当のことを知ったとしたら…。
「最低だよな。」
昨日と同じように、スタジオは不自然な程静かだった。
『ギリセーフ。』
「え?」
『澪は何も知らないし、ギリセーフだろ。』
ふっと笑みがこぼれた。
ギリセーフか…。
「だとしたら、それはお前のお陰だよ。昨日お前がハッキリ言ってくれて目が覚めた。」
『灯里ちゃんのこと、まだ待つのか?それとも本気で澪を…。』