何度でも、伝える愛の言葉。

「後悔は、してないよ。」

『そっか。それなら良かった。』


だから私も正直に話す。



『ずっと知りたかった、なんで辞めちゃったのか。聞けなかったけど本当はずっと気になってた。』

「樹季くん…。」


その聞き方は、ずるいよ…。

そんな、まるで自分も傷付いてるみたいな言い方…。

そんな風に言われたら、心の奥底にしまい込んだ気持ちが溢れ出しそうになるよ。



「私、樹季くんや皆が思ってるようなヤツじゃない…。」

『え?』

「全然素直じゃないし、好きなことに頑張れないし、すぐに諦めてばっかりで…ピアノだってそう。」


本当はすごく好きなのに、
ずっと続けていきたいことなのに。

ちょっと壁にぶつかったくらいで折れて、諦めて、結局…。



「私、逃げただけなの。」


そう、逃げた。


ピアノはいつもそこにあるのに。

自分から離れようとしてた。



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