何度でも、伝える愛の言葉。

2年前


初めて早坂良基(ハヤサカ ヨシキ)先生に会ったのは、私が中学3年のとき。

講師としてスクールにやって来た先生は19歳だった。

明るい茶髪や、なくなりそうなくらいに目を細めてクシャっと笑う笑顔、親しみやすい爽やかな雰囲気ですぐに生徒と打ち解けた。

長身でオシャレで、ギターがよく似合う格好良い先生として女子生徒からはとくに人気があった。


私はピアノコースに通っていたから、ギターコースの先生に会う機会はほとんどなかったけれど、ピアノコースの生徒にも先生の噂は届いていた。


『バンドでデビューが決まっていたけれど、メンバーが問題を起こして白紙になった。』

『デビューが決まっていたけれど、メンバーが他のバンドから引き抜かれて解散した。』

と言うような少しずつニュアンスの違う噂が沢山流れていたけれど、どれが本当なのかは誰も分からなかった。


私はとくに興味がなかったし、そんな噂に参加する気もなければ、わざわざ先生を探してスクール内を歩き回ることもしなかった。


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