何度でも、伝える愛の言葉。
それ以来先生と顔を合わさないまま1年近くの時が流れ、私は高校生になった。
受験生になると勉強が忙しくなる為、スクールを辞めていく生徒が多い。
だけど私が辞めなかったのは、もしかしたら心のどこかで“また先生とあんな風に話せるかもしれない”と期待していたからかもしれない。
だけど1番の理由は、そうじゃなかった。
中学3年の合唱コンクールで私がピアノ伴奏をすると決まったとき、伴奏を狙っていた女子生徒とその周辺から反発が起きた。
そして“仲間外れ”という最も分かりやすい形で私は独りになった。
『あんたのピアノなんて誰も聴きたくないよ。』
日に日に孤立する私がそんな状況に負けずに登校し続けられるはずがなく、その言葉を聞いた日から私は学校へ行けなくなった。
それでもピアノは私の心の拠り所で、スクールに通うのは素直に楽しいと思えた。
ただ学校生活に対する恐怖は消えず、高校も週に1度登校する通信を選んだ。
そして高校生になって二週間程が経った頃、私は再び先生に会った。
あのときと同じ教室へ、あの日と同じように忘れ物を取りに行くと、先生が中でギターを弾いていた。