何度でも、伝える愛の言葉。

「辞めてないですよ。」

『高校生になると辞める子が多いんだってね。そこからが勝負なのに、音楽を仕事にしたいくらい本気でやってる子って結構少ないんだな。』

「先生は、音楽を仕事にしたいと思ってたんですか?」

『日々野さんは?』


私が質問したのに、質問で返されてしまった。

先生のことを、もっと知りたいのに。



「私は、まだ分かりません。好きだけど、趣味っていうか癒しっていうか…。」

『そっか。でも日々野さんなら夢じゃないと思うよ。』


まっすぐな先生の視線を受けても、先生の気持ちは分からない。

まるで、大切な感情を心の奥底に閉じ込めて鍵をかけてしまったみたいに。



「そんなこと分からないじゃないですか。」

『でも、真面目に通ってるじゃん。忘れ物もしないしね。』


あ、話が戻った。

どうしてそこにこだわるのだろう…。



「忘れ物は、しないように気をつけてますから。」

『たまには俺のことも思い出してほしかったなー。』


飾りのないまっすぐな言葉でやっと理解した。

やっぱり先生は、私がここに来ることを待ってくれていたんだ。



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