何度でも、伝える愛の言葉。
「思い出してって言われても…。」
『また忘れ物をすれば先生に会えるかもしれない!みたいな感じでさ。』
イタズラっぽく笑う顔が、前に会ったときよりも近くに感じた。
思い出さなかった訳ではない。
むしろ期待していた。
またあんな風に2人で話をしたいと。
だけど…、
「先生が、遠かったから。」
あのとき、先生の周りに張り巡らされていたバリア。
会わなかった1年、近付けなかったのではない。
先生が遠かった。
柔らかく柔らかく、人を拒絶していた。
『…日々野さんは、良い子だね。』
膝に抱えたままだったギターを近くに立て掛けて、先生は私の前に立つ。
『ずっと気になってた、あのとき日々野さんに冷たい態度をとってしまったこと。』
「そんな…私は、別に。」
そこまで言って言葉に詰まる。
気にしていないとは言えなかった。
『でもまたすぐに会えると思ってたから、そのとき謝れば良いかって…それもそのときは軽い気持ちで。』
「軽い気持ち?」
『生徒に対してそこまで心を開く意味が分からなかったんだ。』
投げやりな言い方だった。
だけど心が、泣いているような気がした。