何度でも、伝える愛の言葉。

『あの頃、生徒たちは俺のことをいろいろ知りたがってた。とくに女子には噂も立てられたし、毎日毎日俺のことを聞きに来る奴が居たんだ。』

「それは私も知ってます。」


噂とは、先生が組んでいたバンドのことだろう。

結局真相は分からないまま、いつの間にかその噂も聞かなくなっていたけれど。



『正直、日々野さんもその生徒たちと同じだと思ってた。またすぐに俺のところへ来て、何の気も遣わずに根掘り葉掘り聞いてくるんだろうなって。』

「私は、」

『でも違った。』


私の言葉を遮って先生は続ける。



『日々野さんは違った。俺のことなんて忘れたみたいに、いつも真面目にピアノに向かってたよな。』

「…見てたんですか？」


私がピアノに向かっていたこと。



『見てたよ。だって、謝りたかったから。』

「何をですか？」

『態度が悪かったことと、日々野さんのことを誤解してたこと。』


今目の前に居る先生は、もうバリアを張っていなかった。

手を伸ばせば、傷付かずに触れられそうな気がした。