何度でも、伝える愛の言葉。

『裏切られたんだ、俺が。』


その後、先生はバンドの話をしてくれた。

誰も居ない部屋で並んで座りながら、手はずっと握り合ったままで。


先生は中学のときに同級生4人でバンドを組んだという。

先生はギター担当で、バンドのほぼ全ての曲を作曲していた。

地元では有名で、ライブをするといつもライブハウスが満員になる程だったらしい。


でも、某事務所にスカウトされメジャーデビューの話が出た頃にバンドの状況は一変する。



『デビューの話はいくつかの事務所からもらってたんだ。その中から、曲を全部自分たちのセルフプロデュースでやって良いって言ってくれたところに決めた。でも…』


メンバーの1人が、別の事務所に入りたいと言い出した。

そこに入れば有名プロデューサーと共に曲を作れることになっていたらしく、その話を捨て難かったメンバーが1人、また1人とその話に乗った。


そうして先生は、ひとりになった。




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