何度でも、伝える愛の言葉。

あのとき、先生はどんな気持ちでこのギターを弾いていたのだろう。

その気持ちを私が知れる日は来るのだろうか。



「バンドはその後どうなったんですか?」

『立派にメジャーデビューしたよ。新世代スリーピースバンドって肩書きでな。俺の音楽なんてもうどこにも残ってなかった。』


今は、まだ分からない。

先生が味わった喪失感や絶望も、悔しさや苛立ちも。

今の私には知ることができない。


だけど、ひとりになる感覚なら私にも分かる。

自分の周りから人が離れていく、あの感覚。



「先生、私もね…」


無意識に、言葉が溢れてくる。


私は、初めてひとりになった日のことを誰かに話した。

先生はずっと、うんうんと優しく頷きながら聞いてくれて、手を握り締める力はどんどん強くなっていった。



「だから私はどこにも行かない。」


離れられる感覚を知ってしまったから、私は大切な人から絶対に離れたりしない。

先生の傍で、いつか先生が『もう大丈夫』だと思えるその日まで。


ずっと、傍にいよう。



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