何度でも、伝える愛の言葉。

声をかけて来たのは、たまにスクールで見かけるピアノコースの女子高生。

長めの丈で履いているスカート、ストレートのロングヘア、薄めのメイク。

上品で清楚なルックスにとてもピアノが似合いそうだと思った。



『聞こえなかったの?』

「えっ?」


そんな姿からは想像もできないような尖った声が私を刺した。



『だから早坂先生とどういう関係なのかって聞いてるの。教室でこそこそ何してるの?』

「何って…とくに、何も…。」


鋭くなる視線に気圧されて、語尾が震えた。


いつか味わった、あの感覚に似ている。

ひとりになっていく、あの。



『何もないわけないでしょ?早坂先生に特別扱いされてるからって良い気にならないでよ。』


そんなこと、ないのに…

言葉が出てこない、声が出せない。


もうすぐ先生が教室に来る時間だ。

授業が終わった後、いつも先生はピアノコースの教室に来てくれる。


助けて、先生…。



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