何度でも、伝える愛の言葉。

「もうひとりになりたくないの…。」


ただ離れたくない。
ただ傍に居てほしい。



『澪…。』


もう1度頭を撫でようとした先生の手を、今度は避けられなかった。

大きくて温かいその手の優しさを感じる度に、失ったときの寂しさも想像してしまう。



『俺はお前をひとりにはしない。』


だけど先生の声が、その寂しさも拭い去ってくれた。



「本当?」

『本当。約束する。』


目に見えない約束を無条件で信じる素直さは私にはなくて。

それでも私は先生の言葉を信じたかった。



『だから澪も、俺をひとりにしないって約束してくれるか?』

「うん、約束する。」


この約束をずっと忘れたくないと思った。

自分がまた誰かを信じられたことも、覚えていたかった。


だけどやっぱり、目に見えない言葉は脆くて不安定だった。


< 75 / 276 >

この作品をシェア

pagetop