何度でも、伝える愛の言葉。
届かない人
【樹季 Side】
5人になったバンドは順調に活動していた。
オリジナル曲も増え、ライブの回数や動員数も着実に伸ばしていた。
そして目に見えないところで、メンバーたちの変化も確実に起きていた。
俺が澪と過ごす時間が多くなっていったのはとても自然な流れで、日常の中に違和感なく澪が居ることが素直に嬉しかった。
まだ澪がピアノを辞めようとした理由は聞けていないけれど、澪から心を開いてくれるまで待つつもりだ。
そして時の流れと共に、俺の澪への気持ちはどんどん大きくなっていた。
「本当つまんねぇルールだよな、バンド内恋愛禁止とかさ。」
『つまらなくて悪かったな。』
俺の呟きに悠斗のパンチが返ってくる。
『俺の気の迷いで作ったみたいなもんだし、そんなに律儀に守らなくても良いんだぞ。』
俺が澪を好きなことを知っているのは、今のところ悠斗だけだ。
元々は悠斗が澪を“好きになろう”としていたことから生まれたルールで、縛られているつもりはないけれど破ろうとも思っていない。