何度でも、伝える愛の言葉。

「早坂ともいろいろあって、生徒ともいろいろあって…でもそれでピアノを弾きたくないって思うもんなんかな。しかも一生。」


何が澪を、そこまで思い詰めさせたのか。

もっと深いところに、もっと深い傷みがあるのではないか。

そんな思いが渦巻く。



『私がピアノを弾くことで嫌な思いをする人が居るとか言ってたな。』

『お前…そこまで聞き出したのかよ。すげぇな。』


ここまで来ると誠太の空気の読めなささは尊敬できるレベルだ。


それにしても、嫌な思いをする人が居るということが気になる。

それはもしかして、早坂のことではないのか。


澪を傷付け、澪をピアノから遠ざけようとして。

まだ会ったことのない早坂に苛立ちが募る。



『俺が聞いたのは、そこまでだけど…』

「話してくれてありがとな。あとは俺が直接聞く。」


澪のことを、ちゃんと知りたい。


もし今、バンドでピアノを弾くことにつらい思いをしていたとしたら。


俺はそれを取り除き、澪を救いたい。



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