何度でも、伝える愛の言葉。

その週末は、小さなライブハウスで対バンライブだった。

この日に向けてリハーサル漬けだった日々も、今日の本番を終えれば少し落ち着く。


悟の話では、今日このライブに早坂を呼んだらしい。

話がしたければタイミングを窺って俺から声をかけるしかない。



『樹季くん?』

「ん?」


楽屋とも呼べない狭い控え室でボーッとしていたら、澪が心配そうに俺を見ていた。



『大丈夫?体調悪くない?』

「大丈夫だよ、ちょっと考え事してただけだから。」


澪は納得したように頷いたけれど、その後でもう1度不安気な顔になる。


早坂が来ることを、澪は悟から何も聞いていないのだろうか。

それとも知っているからこそ不安気なのか。


少し離れたところに座っている他のバンドたちが澪を見ながら何か話している。

可愛いな、きっとそんなところだろう。


澪はそんなことにも気付かない様子で遠くの扉を見ていた。

ステージに続く扉を。



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