白い羽根とシャッター音
「また…見てる」
その声に後ろを振り返ると、最初に会った時と変わらぬトーンで喋る彼がいた。
「その写真、好き?」
首を傾げ質問を投げ掛けてきた彼は、そのあとゆっくりとした足取りで私の横へと歩いて来る。
そんな彼を目で確認した後、再び写真に視線を戻す。
「好き、なのかな…」
「…?」
「この写真の桜、花びらがひらひらと散っていってるでしょ?」
コクリと彼が横で頷く。
「すごく儚くて。散っていく様がまるで、命そのものが散っていってるみたいで切なくなる…」
「…よく、わからないけど。実際に見るとすごく綺麗」
「そうなんだろうね。写真だけでもすごく綺麗だもん」
本当に、すごく綺麗。本物が見てみたい。
「この近くの丘」
「え?」
「きっと、来年も咲く。また、撮る」
来年………。
「君も、一緒に来る?」
「………」
言葉が返せなかった。
彼にはもう、来年はこない。
6日後に、彼の寿命は尽きる。
でも、その事を教えてあげることはできない。
寿命を告げたことで、もしも死の妨げになってしまったら…。
死神は、その時が来るまで傍で監視するだけ。
そもそも、こんな風に会話すらしてはいけないのかもしれない。