白い羽根とシャッター音
「い、今からその場所、案内してくれないかな?」
「でも、咲いてない…」
「それでもいいの!」
わかった。と言って、彼は出掛ける準備を始めてくれた。
準備をしている彼を部屋の角からぼんやりと眺める。
なんで、あんな提案してしまったんだろう…。
自分でも内心驚いていた。
…近付けば近付くほど、いつものように死を見届ける時がツラくなってしまうのに。
いつもそうだ。
相手から姿が見えていないとわかっていながらも、ターゲットの傍にいる内に、一緒に行動を共にしてしまう。
時には、その人の独り言や友人との会話に返事をしてしまったり。
…私の声が届く訳がないとわかっていながらも。
「ねぇ、」
「うあっ!は、はい!」
ボーとしてしまっていて、彼が近くまで来ていたことに気が付かなかった。
「準備、できた」
「あ、はい!じゃぁ、行きましょうか…え?」
突然クスッと少し、彼が笑った。
すごく驚いた。
と同時にこんな風に笑うこともあるんだと、彼の笑顔…とまではいかないけど笑みに
なんだか嬉しくなった。
「ど、どうしたんですか?」
「なんで急に敬語…?」
ぼんやりとしていたから、まったく気付かなかった。
「そういえば。…あ、あはは」
思わず私も笑ってしまった。
こんな風に人と会話するのが、初めてだからか。
それとも、彼だからか。
なんだかとても、舞い上がってしまっている自分がいた…。