白い羽根とシャッター音
さくら
わぁ…っ!と思わず声が漏れた。
丘の上に登りきった後、視界に広がってきたのは水平線の向こうに沈んでいく夕日だった。
そして、丘の右手側の方に、あの写真の桜らしき木を見つけた。
近くに寄ってみると、本当に立派な木であることがわかる。
桜は咲いておらず、今は新緑の葉を風にゆらゆらと揺らしている。
木の幹に手を添え、スッと目を閉じて木の鼓動を感じていたら、
突然パシャとシャッター音が聞こえてきた。
その音の方を見てみると、彼がカメラを構えてパシャ、パシャ…と夕日を撮っていた。
私は彼の邪魔にならないよう桜の木から、少し横に移動する。
一瞬、ファインダー越しに彼と目が合ったような気がしたけど、そのまま彼は写真を撮り続けていた。
暇になった私は町を見渡そうと、丘の端にぐるっと設置されている柵へと近付く。
徐々に辺りがオレンジから紺色へと変わっていく。
すると、町から次々に明かりが灯っていく。
蝋燭に火を着けていくみたいで、とても綺麗だった。