白い羽根とシャッター音
翌日。
仕事先から部屋に戻ったら、また彼女がいた。
昨日と同じ場所に立ち、同じ写真を見つめていた。
「また…見てる」
近くの丘で、少し前に撮った桜の写真。
風に吹かれ、ひらひらと散っていく花びらが、とても綺麗だったから撮った。
彼女に、その写真が好きなのか問い掛けたら、
ひらひらと散っていく花びらが儚いと返された。
…彼女こそ、儚いと思う。
白のワンピースとは対称的な漆黒の髪と、袖から伸びる細く白い腕。華奢な体。
そして、白い羽根。
彼女こそ今すぐにでも散っていってしまいそうだ。
「君も、一緒に来る?」
そんな彼女に見せてあげようと思い、来年桜が見える丘に案内しようと、誘ってみたら、
彼女は、悲しげに顔を歪め、俯いてしまった。
どうしたのかと、悩んでいると勢いよく顔をあげた彼女が突然、その丘に案内して欲しいと頼んできた。
その必死な様子に、理由はよくわからなかったけど、同意をし、彼女と共に桜の木のある丘へと向かうことにした。