白い羽根とシャッター音







ふと、地上の方を見ると、先程まで部屋の中にいたはずの彼が、外をキョロキョロと走っているのが目に写った。

それも、時々空を見上げながら。





……もしかして、私を探してくれている?


違うかもしれない。でも、もしもそうだったら嬉しい。




私は、自分が出せる全速力で彼の元へと向かった。




しかし、彼も走っているので、なかなか追い付かない。

一定の距離が開いたまま、なかなか縮まらない距離に私は思わず、



「待って!」


と叫んでしまう。もちろん周辺を歩いている人間には聞こえていない。

でも、彼にはきちんと届いたようで、ピタッと立ち止まる彼。


……今まで、町中で叫んで気付いてもらえたことなんてない。
人間はみんな、私そ存在になんて気付いてすらいない。もちろん、ターゲットの人も。



けれど、彼にはきちんと聞こえるんだ。
聞き届けてくれるんだ。





辺りをキョロキョロとした後、彼はすぐに私の姿を見付けてくれた。



彼の表情が一瞬和らいだように見えたのは、私の願望か、それとも…。



彼との距離が少しずつ縮まっていく。


その時、私をすり抜けて、ものすごいスピードの自転車が過ぎ去っていった。


自転車はスピードを緩めることなく、彼へとまっすぐ突き進んでいく。



私の姿が見えてる彼には、突然自転車が現れたようなものだ。

一瞬反応が遅れてしまい、自転車と衝突してしまう、スレスレで自転車をかわす。



衝突してしまうと思った私は、彼の無事な姿に、ホッと胸を撫で下ろす。




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