白い羽根とシャッター音
この日、私は彼の家へ行く前に
何か彼の為にできないかと朝から悩んでいた。
…が、結局何も思い付かないままふらふらと飛びながらマンションへと向かう。
いっぱい考えたせいか、頭が重い…。
彼の部屋のベランダへと辿り着くと、彼が窓辺に立っていた。
私の姿を見つけると、そのまま窓を開けてくれる。
「え?あ、ありがとう…」
戸惑いながらも、開けてくれた窓から彼の部屋へと入る。
いつも窓をすり抜けて入ってるから、こうして彼が招いてくれたことは初めてだった。
そもそも、彼に気付かれる前に部屋に入ってしまっていたから、こうして入る前に彼が気付いてくれたのもの初めてなのだけど。
「いつも勝手に入ってるから」
「ご、ごめん……」
「たまには、来るのを待ってみようと思った」
そう言いながら、窓を閉める彼。
私が来るのを待っていてくれた…ってことだよね。
それがなんだか嬉しくて、胸が温かくなった気がした。
というか、体が熱い気がする。
「き、今日は?仕事?」
嬉しさを噛み殺し、質問すると彼は首を横に振る。
「休み」
「そ、そっか…」
それから部屋はシン…と静かになってしまった。
元々彼もお喋りって訳でもないし、
私もなんだか今日は頭がボーとしてしまう。
彼の最後の日なのに。
…何かしてあげなくちゃ。