白い羽根とシャッター音
微睡みの中で、彼の声が聞こえた。
「さくら…」
私の名前。
彼が付けてくれた名前。
…また呼んでくれた。
額に彼の手が置かれる。冷たくて気持ちいい。
「大丈夫、かな…」
ボソッと呟きが聞こえた。
「ごめん、…仕事、行かなきゃいけない」
その言葉と共に、彼の手がスッと額から離れる。
待って!今日は外に出ちゃダメ!
彼が部屋から出ていくのが分かった。
お願い行かないで!!!!
ハッと、目が覚める。
チュンチュンと、鳥の声が最初に耳に入ってくる。
窓の外は明るくなり始めていて、もう朝になってしまったのだと気付き、ドクドクと心臓がはや鳴る。
彼は…!?
彼を見つけようと、ベッドから起き上がろうした瞬間、グラッと体がバランスを崩し、再びベッドに倒れてしまう。
「……え」
体が重たい。
けど、今は一刻も早く彼の姿を確認したい。
なんとか起き上がり、床に足を着き、立ち上がる。
「うわっ!」
上手くバランスがとれず、床に転んでしまう。
どうして…?
「羽根………」
そこで気付く。
今までは、羽根で空を飛び、羽根のお陰で身軽に行動できていたのだ。
でも今は、その羽根がない。
「こんな時にどうして…っ!!」
死神の本能とは、恐ろしいものだ。
自分で無意識の内に、自分自身の行動を邪魔しようとする。