白い羽根とシャッター音
黒い羽根を羽ばたかせながら、青空の中を飛んでいくネロの背を見た後、チラっと自分の背中の羽根を見る。
何度見ても、何時見ても、私の羽根は白い。
どうして私だけ、こんな色をしてるのだろうか。
再びため息をひとつこぼした後、気を取り直して目下に広がる町並みを眺める。
私もそろそろ回収しに行かなければ。
今回のターゲットの寿命は、あと7日のはずだ。そろそろ近くで待機をしていなきゃ。
死神の仕事は、寿命間近に迫った人間の傍でその人間を観察し、死が訪れるその瞬間を見届けることだ。
その際、その人間の魂を回収するところまでが私たちの仕事。
私たち死神の姿は、人間には見えない。
極まれに、死ぬ直前、死神の姿を見ることがあるらしいが、滅多にないケースだ。
目的地を目指して、飛んでいく。
暫くすると、住宅地の中に今回のターゲットが住む3階建てのこじんまりとしたマンションが見えてきた。
それを確認した後、ゆっくりと高度を下げていく。
死を見届けた後、回収までしなければいけない。
それが仕事だ。頭ではわかっているけど…。
「…やだな」
ポツリと呟いたその言葉は、青い空の中に溶けて消えた。