白い羽根とシャッター音
「どうしよう…っ、間に合わない」
その時、左前方を車が走っているのが見えた。あの車だ。
かなりスピードが出ており、真っ直ぐ横に突き進んでいる。
ハッと、彼の方を見てみると信号が青に切り替わった瞬間だった。
彼が歩き出す。
だめ、だめ、だめ、だめ!
お願い、行かないで、止まって!
「叶多ーーーーーーーー!!!!!」
その時、彼が私の声に気付き、こちらを振り返った。
「さくら…?」
叶多と目が合う。
しかし、車はグングンと叶多に向かって突き進んでいく。
周りの歩行者がそれに気付き、ざわつく。
車に気付いた叶多だったが、避けるにはもう無理な距離くらい、近くまで車が来てしまっていた。
「だめ!叶多は私が死なせない…っ」
そう叫んだ瞬間だった。
体がふわっと浮き、自分でも驚く位の速さで叶多の元へと近付く。
叶多が衝突を覚悟し、身構えたその時、
「叶多!!」
私の手が叶多へと届き、そのまま勢いよく、叶多を歩道へと突き飛ばす。
私の背後を車が横切っていく。
「はぁ…はぁ、はぁ………まに、あった…」
歩道で尻餅をつき驚いている叶多の目の前を、へなへなと倒れ込む。
ざわざわと今の状況を見ていた歩行者たちが、騒ぐ。
「お兄さん、大丈夫?危なかったわねぇ」
もちろん、歩行者たちには突然、叶多が歩道に転んだように見えただろう。