白い羽根とシャッター音
そんなざわつく歩行者たちに、
「大丈夫です」と一言いった後、叶多はぐいっと私の手首を掴み、その場を離れるように、物凄い勢いで私を引っ張りながら走り去る。
午前中の人気のない小さな公園まで着いた所で、やっと叶多が立ち止まる。
お互いに息があがってしまっている。
「はぁ…、はぁ。どうして…」
しゃべれるくらいに、息が整ったところで叶多が口を開く。
「どうして、君があの場所に?」
彼を助けることができた。
これで、彼の寿命は延びた。
もう隠すことはない。
「……今日、あの場所であなたは事故に遭う予定だった」
「…は?」
叶多にしては珍しい素っ頓狂な声があがる。
最後に意外な叶多を見れた。
そのことに何だか嬉しくなる。
「搬送先の病院で、あなたは命を落とし…寿命が尽きるはずだった」
驚きを隠せない表情で叶多は何も言わず私の言葉に耳を傾けてくれた。
「私は、死神なの。あなたの最期を見届け、………そしてあなたの魂を回収する。それが仕事だった」
「死神…?」
確かめるように呟いた叶多の言葉にコクリと頷く。
「最初は驚いた。今まで私の姿を見れた人間なんていなかったから」
いつもいつも、私が勝手に相手の行動に合わせて、まるで一緒に過ごしてるかのようにしてきた。
「こうして、目を合わせて、会話できるなんて、…夢みたいだなって」
誰も私の声に気付いてなんてくれなかった。