白い羽根とシャッター音
5年後。
「さくらーーー!走ったら危ないわよー」
「むぅー!」
満開の桜と町の景色が一望できる絶好の場所にブルーシートを敷き、彼女と、娘のさくらと、花見をしていた。
まだまだ元気盛りのさくらは、花見に早々に飽きてしまい、この丘を駆け回っていた。
パシャッ…パシャッ…
「もう!叶多さんからも言ってください!」
そうぷりぷりと怒っているのは、5年前の春、ここで出会ったあの女性。
あれから、何度か丘で会うようになり、
そのうちデートを重ね、…そして結婚をした。
「パパーーー!」
手を振りながら、こちらに駆けて来るまだまだ小さなさくら。
「さくら!」
さくらを抱き上げると、きゃっきゃっと嬉しそうにはしゃぐ。
そんな姿を片手で持ち、その表情を写真におさめる。
彼女との子である、娘のさくら。
生まれたばかりの時、さくらの背中には羽根のような小さな痣が見つかった。
俺はそれを見た時、どうしてもこの子が『さくら』の生まれ変わりなんじゃないのかと、気がしてならなかった。
彼女にどうしても、名前はさくらにしたいと提案すると、彼女は「いい名前だね」と言って、了承してくれた。
さくらの背中の痣は、年々薄くなっている。きっと大人になる頃には綺麗さっぱりなくなっていることだろう。