打ち上げ花火とミルクティ
ふと、女と目が合った。



女はしばらく璃梨を見つめ、やがてニヤリと笑った。



璃梨は女に見つめられ、全く動けなくなってしまった。



女は軽快にステージを下り、ステップを踏みながら璃梨に近づいてくる。



女のダンスを見ている他の客たちは、次々と女の為に道を開けた。



女は璃梨の前に立った。



ハイヒールを履いているにも関わらず、背丈は璃梨と変わらない。



頭は小さく、それでいて猫のような目は顔の三分の一ほどを占めていた。



鼻は小さく、唇はぷっくりと分厚い。



絶世の美女というわけではないが、そのエキゾッチクな容姿には、充分すぎるほどの魅力があった。



背は高くはないが、身体のバランスは完璧だった。




「あなた、後であたしの楽屋に来なさい」




女は璃梨の耳元でそう囁いた。



璃梨は思わず身震いをした。



女は璃梨の返事を聞かずに、再びステージへと戻って行った。
< 19 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop