打ち上げ花火とミルクティ
「これ、お願いします」



恵斗は到着した待合室の受付の女性に、再び診察券を手渡した。



この女性は清子とは違い、二十代前半くらいの細身の女性だった。



ここでも何かしらの手続きが必要らしい。



総合病院とはなかなか面倒なものである。



飽きるくらいに病院には来ているが、この手続きは一体何の手続きであるかはわからない。



わかる必要もないのだが。



「あ、恵斗くん。おはよう」


「どうも」



恵斗の態度は、清子に対するものとは明らかに違っていた。



この女性を避けているようにも見える。



「じゃぁ、そこで待っててね」



女性はそう声を掛けたが、恵斗は何も言わずに薄水色の合皮のソファに腰かけた。



この科には、あまり人はいなかった。



同じ階にある歯科や眼科などはソファに人がいっぱいだが、現在この場所には恵斗と数人の老人がいるだけだった。



「あんた、よく見かけるけど、何の病気?」



少し離れた場所に座っている老婦人が恵斗に声を掛けて来た。



背は少し曲がっているが、黒いワンピースに白いマフラーという出で立ちは品が良かった。



付き添いの人間がいる様子もない。



恵斗はニッコリと微笑む。
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