打ち上げ花火とミルクティ
「幸せって・・・なんだろう・・・」



恵斗は独り言のつもりで小さく呟いた。



「自分が幸せって思う事なら何だって幸せなんだよ。石ころにつまずいて転んでも、借金
作っても、病気になっても、それを幸せなんだって思えば、きっとそうなる」


「そんな無茶な」


「そう思ってる内は、幸せにはなれないよ」



長年生きているだけあって、老婦人の言葉には重みがあった。



まだ賛成は出来ないが、いつかそれがわかる日がくるといいなと恵斗は思った。



ふと、老婦人の機械からアラームが鳴った。



婦人は赤いボタンを押した。



手慣れている。



「じゃぁ、また今度」



婦人はそう言って恵斗に笑いかけた。



今度、か・・・。
 


少し待って、恵斗の機械もアラームを鳴らした。



老婦人同様に赤いボタンを押す。画面には『二番の診察室にお入りください』という表示が出ている。



老婦人が入った診察室の隣だった。



恵斗は立ち上がり、二番の診察室へと歩を進めた。恵斗が入ったドアの上にはこう書かれている。





《脳神経外科 二番診察室》
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