北の魔獣
走る。

心臓が破裂しても構わんとばかりに走る。

しかし巨体に似合わず、ヒグマの足は恐ろしく速かった。

追われたオドは物陰に隠れようとしたが叶わず、ヒグマの牙を腰の辺りに受けた。

「あぐぅうぅうぅっ!」

オドの悲鳴に驚いたのか。

ヒグマは再度攻撃目標を変え、いまだ7人が取り残されている屋内に眼を向けた。

ヒグマは金蔵と春義を鋭い爪の一撃で撲殺し、更に巌に噛みついた。

「ぎゃあぁあぁっ!」

この世のものとは思えぬ呻き声。

この時、野菜置き場に隠れていたタケが莚(むしろ)から顔を出してしまい。

「ひぃっ!」

それに気付かれてしまった。

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