北の魔獣
ヒグマは彼女にも襲いかかった。

「腹破らんでくれ!喉喰って殺して!」

居間に引きずり出された妊娠中のタケは、腹の中の子供の命乞いをしたが、それも空しく上半身から食われ始めた。

一方、川下に向かっていた護衛の一行は激しい物音と絶叫を耳にして急いだ。

そこへ重傷のヤヨと子供達が辿り着く。

「ヒグマ!恐ろしく大きなヒグマがっ!」

皆は明景家で何が起こっているかを知った。

途中でオドを保護した後、男性達は明景家を取り囲んだが、暗闇となった屋内には迂闊に踏み込めない。

「うぎっ!いぃぃいぎぃいいぃいぃぃっ!」

中からは、タケと思われる女の呻き声と、肉を咀嚼し骨を噛み砕く音が響く。

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