北の魔獣
一か八か家に火をかける案や、闇雲に一斉射撃しようという意見も出たが、子供達の生存に望みをかけるヤヨが必死に反対した。

一同は二手に分かれ、一方は入り口近くに銃を構えた10名あまりを中心に配置し、残りは家の裏手に回った。

そして裏手の者が空砲を2発撃つと、ヒグマは入口を破って、表で待つ男性達の前に現れた。

先頭の男性が撃とうとしたがまたも不発に終わり、他の者も撃ちかねている隙に、ヒグマはまたも姿を消した。

ガンピ(シラカバの皮)の松明を手に明景家に入った者の眼に飛び込んできたのは、飛沫で天井裏まで濡れるほどの血の海、そして無残に食い裂かれたタケ、春義、金蔵の遺体であった。

上半身を食われたタケの腹は破られ、胎児が引きずり出されていた。

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