北の魔獣
こうして、犠牲者の遺体を餌にヒグマをおびき寄せるという前代未聞の作戦が採用された。

作戦は直ちに実行された。

銃の扱いに慣れた7名が選ばれ、交替要員1人を除く6名が補強した梁の上に張り込んでヒグマを待った。

居間に置かれた胎児を含む6遺体が放つ死臭の中、森の中から姿を現し近づいてきたヒグマ。

一同固唾を飲んで好機を待つ。

しかし、家の寸前でヒグマは歩みを止めて中を警戒する。

(何故だ、何故入らん?)

業を煮やす管。

ヒグマは人間を嘲笑うように、何度か家の周囲を巡り、森へ引き返していった。

男性達はそのまま翌日まで待ち伏せたがヒグマは現れず、作戦は失敗に終わった。

こちらの作戦の裏をかくような、恐ろしく狡猾なヒグマ。

まさしく悪鬼のような存在であった。

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