北の魔獣
12月14日

最期

空が白むのを待ち対岸を調査した一行は、そこにヒグマの足跡と血痕を見つけた。

銃弾を受けていれば動きが鈍る筈と、急ぎ討伐隊を差し向ける決定が下された。

逸早く山に入ったのは、10日の深夜に話を聞きつけて三毛別に入った山本 兵吉(やまもと へいきち、当時50歳)だった。

鬼鹿村温根に住む山本は、若い頃に鯖裂き包丁一本でヒグマを倒し『サバサキの兄』と異名を持つ人物で、軍帽と日露戦争の戦利品であるロシア製ライフルを手に数多くの獲物を仕留めた、天塩国(現在の留萌振興局管内の全域と、上川総合振興局管内の塩狩峠以北および宗谷総合振興局管内の豊富町と幌延町、さらに稚内市の最南端の一部)でも評判が高いマタギだった。

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