時の彼方に君がいた
しかし、それは水野に対してもそうであり
しかも小雪に対するものとはかなり質が違った。
それゆえ怒りと同時に
水野への同情といたわりたいという気持ちが湧き上がってきた。
「……つらいね、水野」
僕の言葉に、水野はゆるゆると目を見開いた。
「あきれたり怒ったりしないのか?」
僕の反応は、どうやら水野にとって
予想の範疇外をいくものだったらしく
綺麗な顔が不信げに歪められた。
「あきれたし怒りも湧いてきたけど、それ以上に同情するよ」
僕は水野に向かってにこっと笑った。
「僕にも好きな人がいる。
恋したときのどうしようもない気持ちには覚えがある。
それを告白されるたびに味あわなければいけないとは、水野も苦労人だね」
僕の脳裏には、初恋の相手にして
今なお想っている人物の笑顔があった。
「藤音…」
水野がなんとも言えない顔をして
僕を呼んだ。
「……藤音って、自分のこと『僕』っていうんだな」
しばらくなんと言われたのか理解できなかった。
いきなり話を切り替えた水野の目には
さっきとうってかわって
愉快げないたずらっぽい色が浮かんでいる。
僕は自分の顔から徐々に血の気が失せていくのを感じた。
失言だ。
迂闊だった。
今までこんなことなかったのに。
水野相手だと、どうも調子が狂う。
あまりに僕が青い顔をするからだろう。
水野は我慢できないと言わんばかりに
声を上げて笑いだした。
「あははっ、すげー顔」
「…うるさい」
しつこく笑い続ける水野の足を軽く蹴る。
「いてっ、暴力反対っ」
「暴力ってほどのもんでもないだろう」
水野は笑いすぎて滲んだ涙を拭うと、
「やっぱ、藤音っておもしろいよなぁ」
と僕の頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。
「なんか藤音といるとさー
こういったら失礼なんだけど
すっげー気の合う男友達といるみたいにかんじるんだよな
親友ってやつ?
まぁ、俺、実際にはそんなのいたことないけどな」
へらへらと少し照れくさげに笑う水野の横で
僕は息をつまらせていた。
感動していた。
それこそ情けないほどに。
「そ…それで相談って?
今の話だけだとただの懺悔じゃない」
胸がいっぱいになったことを隠すように荒っぽく言うと
水野は はぁーっとため息をついた。
「俺、どうすればいいかなぁ」
「どうすればって……とりあえず女の子たちと別れなよ」
「でも、みんな大好きなんだよ
大好きなのに別れるって、おかしくないか」
「うん…まぁ」
水野がちらりとこちらを向いて首をかしげた。
「藤音ってさ、思考が女子よりじゃないんだな。
女子ってふつう、女の子の味方するもんだろ?」
「……怒ってほしいの?」
「いや、そういうわけでは」
「水野だって変わってる。
軽蔑されるって思ってたのに、わたしに相談したんでしょ?」
「…ホントだ」
しかも小雪に対するものとはかなり質が違った。
それゆえ怒りと同時に
水野への同情といたわりたいという気持ちが湧き上がってきた。
「……つらいね、水野」
僕の言葉に、水野はゆるゆると目を見開いた。
「あきれたり怒ったりしないのか?」
僕の反応は、どうやら水野にとって
予想の範疇外をいくものだったらしく
綺麗な顔が不信げに歪められた。
「あきれたし怒りも湧いてきたけど、それ以上に同情するよ」
僕は水野に向かってにこっと笑った。
「僕にも好きな人がいる。
恋したときのどうしようもない気持ちには覚えがある。
それを告白されるたびに味あわなければいけないとは、水野も苦労人だね」
僕の脳裏には、初恋の相手にして
今なお想っている人物の笑顔があった。
「藤音…」
水野がなんとも言えない顔をして
僕を呼んだ。
「……藤音って、自分のこと『僕』っていうんだな」
しばらくなんと言われたのか理解できなかった。
いきなり話を切り替えた水野の目には
さっきとうってかわって
愉快げないたずらっぽい色が浮かんでいる。
僕は自分の顔から徐々に血の気が失せていくのを感じた。
失言だ。
迂闊だった。
今までこんなことなかったのに。
水野相手だと、どうも調子が狂う。
あまりに僕が青い顔をするからだろう。
水野は我慢できないと言わんばかりに
声を上げて笑いだした。
「あははっ、すげー顔」
「…うるさい」
しつこく笑い続ける水野の足を軽く蹴る。
「いてっ、暴力反対っ」
「暴力ってほどのもんでもないだろう」
水野は笑いすぎて滲んだ涙を拭うと、
「やっぱ、藤音っておもしろいよなぁ」
と僕の頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。
「なんか藤音といるとさー
こういったら失礼なんだけど
すっげー気の合う男友達といるみたいにかんじるんだよな
親友ってやつ?
まぁ、俺、実際にはそんなのいたことないけどな」
へらへらと少し照れくさげに笑う水野の横で
僕は息をつまらせていた。
感動していた。
それこそ情けないほどに。
「そ…それで相談って?
今の話だけだとただの懺悔じゃない」
胸がいっぱいになったことを隠すように荒っぽく言うと
水野は はぁーっとため息をついた。
「俺、どうすればいいかなぁ」
「どうすればって……とりあえず女の子たちと別れなよ」
「でも、みんな大好きなんだよ
大好きなのに別れるって、おかしくないか」
「うん…まぁ」
水野がちらりとこちらを向いて首をかしげた。
「藤音ってさ、思考が女子よりじゃないんだな。
女子ってふつう、女の子の味方するもんだろ?」
「……怒ってほしいの?」
「いや、そういうわけでは」
「水野だって変わってる。
軽蔑されるって思ってたのに、わたしに相談したんでしょ?」
「…ホントだ」