時の彼方に君がいた
水野と別れた後


僕は学校に戻っていた。


いてもたってもいられなかった、


足早に美術室へと向かい


いきおいよくドアを開け放つ。


少し暗くなった夕方の部屋の中


杏子先輩は一人、画材を片付けていた。


僕の顔を見て、先輩は驚きに目を見開く。


「翼?どうしたの、今日はもうこないって」


「……えへへ、時間があったから来てみたんです」


「時間って…もう総下校の時間過ぎてるよ」


杏子先輩はおかしそうに笑って、前の時計を指差した。


僕はあたふたとほかの理由を探したが


先輩にはどうでもいいことだったらしく


「門まで一緒に行こう」


とふわりと微笑んだ。
< 30 / 34 >

この作品をシェア

pagetop