box of chocolates
 おしゃべりをしながら、あてもなくドライブをする。ただそれだけでも楽しく、私にとっては幸せな時間だった。
「今年もあと五分で終わるよ」
「もうそんな時間か。どこかに車を止めないと」
 あてもなく走っていた車は、霞ヶ浦のほうまで来ていた。特に何もないところに、車を止めた。
車についているデジタル時計が二十三時五十九分になっていた。自分の腕時計の秒針を見ながら、カウントダウンを始めた。運転席と助手席のふたりが少しずつ、近づいた。
「さん、にい、いち……」
 ゼロ! のかわりに口づけた。それは、甘く、濃厚な口づけ。
「あけましておめでとう」
 しばらくして、重ねていた唇が離れると、貴大くんの笑顔がそばにあった。
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