box of chocolates
 カフェを出てからも、ギュッと手を握ってくれていた。ずっと、ずっと手を繋いでいてほしい。この温かい手で、他の誰かと手を繋いでほしくない。私の手だけをギュッとしてほしい。
「いやだ……」
 貴大くんの隣で、俯いたまま、呟いた。
「どうしたの、急に」
 私は、問いには応えず、ギュッと手を握った。
「ほら、プレゼントを買うんだろ? 俯いていたら、買い物できないよ」
 そんなこと、言われなくてもわかっている。わかっているけれど、顔があげられない。何も言えない私は、またギュッと手を握った。
「じゃあ、そっちに行ってみるね」
 貴大くんは、自分の気の向くままに歩き始めた。
「プレゼント、どんな物がいいかな? どんな人か、会ったことないからわからないけれど」
 口を閉ざしてしまった私に気を遣ってくれると、ますます話せなくなる。さっきから、言葉のかわりに涙がポロポロこぼれている。

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