box of chocolates
 小さな街の洋菓子店、蒲公英。賃貸マンションの一階にある小さな店だけれど、パティシエである父は、世界でも名の知れた洋菓子コンクールで優勝した経験がある。その味に、わざわざ遠方から買いに来るお客様もいるほどだ。そんな父の背中を見て育った私は、パティシエという職業に憧れ、私も父のようなパティシエになりたいと思うようになった。
 今日は、店を十七時で閉店にし、私のために入学祝いパーティーを開いてくれるのだと言う。

「ただいま」

玄関に、見覚えのない革靴。今日は、私のお祝いのはずなのに、お客様かな。そう思いながら靴を揃え、リビングに向かった。
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